音無くんは、今日も図書室で歌う
「ねぇ、僕の仕事が終わらないから、本を借りるなら早くしてくれないかな」
「……え?」
え、じゃなくて、本を借りる為に図書室来たんだろ?なんなの、君。そう怒られた。
いや…あたしは…
「1人になれる場所を探してて」
そう言うと音無くんは、何故か少しだけ、優しい顔つきになったように感じた。
「ごめんね、図書室は僕が居るから1人にはなれないよ。他を当たるか……月曜日は僕はここに居ないから、月曜日に来なよ」
この3年間、図書室に来た人なんて誰も居ないから、月曜日なら1人になれるんじゃない?
そう音無くんは言った。
3年間って言った?
音無くんは、高校に入学して、ずっとこの図書室に居たの?
「どうして図書室で歌うの?」
あたしがもし歌うとしたら、図書室は候補にも上がらない。
また答えてくれないかと思って、余計なことを聞いてしまったと思い口を閉じた。だけど音無くんは答えてくれた。
「静かだったから。ここが1番静かで、誰かが来る気配がなかったから」
だから君も、ここなら一人になれると思って来たんだろ?そう答えてくれた。