音無くんは、今日も図書室で歌う
きっとこの瞬間
あたしは音無くんに恋をした。


今日もただ音無くんの歌を聴きながらあたしは目を閉じている。

心地良過ぎて眠ってしまいそうになる。


そんなうとうとした中で、あたしはある事を口走ってしまった。

こんなこと言うつもりじゃなかったのに。
 

眠るあたしに、もう暗くなってきたから帰ったほうがいいと、声をかけてくれた音無くん。


あたしの肩を揺する。
目を開けたら目の前に音無くんが居て、想いが溢れて口走った。


「あたしの歌を作ってほしいな」


……?
何を言ってるんだ、あたしは!
いや…でも……突然思ったわけでは無いけど。言うつもりはなかったが。


作詞作曲をしている時の音無くんはズルいんだ。

楽譜を書くのにその長い前髪が邪魔なのか、よく前髪をかき上げながら鉛筆を走らせている。

悩みながらも動く手。

あたしはその様子が大好きだった。


あたしのこともあんな風に悩みながら、考えてほしいだなんて、そんなことをずっと思っていた。

それが今、口から溢れた。


あたしを思って曲を作ったら、音無くんはどんな曲を作ってくれるんだろうか。
どんな歌詞を付けてくれるんだろうか。

ずっとそう考えていたから、寝ぼけてついつい……言ってしまった。
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