ねこ先輩に「好き」を伝える方法。
昔。

友達を家に連れてきたとき、お線香の香りでからかわれたこともあった。

母親がいないってことで『かわいそう』って哀れな見目で見られたこともあった。


でも、本当に欲しいのはそれじゃない。

……里紗先輩みたいに。

お線香をあげてほしかった。


里紗先輩がゆっくりと振り返る。

それから私の近くへ来て、私を抱きしめた。

抱きしめた意味は、言葉なくとも、なんとなく伝わった。


多分、保健室で里紗先輩のお母さんの話をしたことを思い出したんだろう。

お母さんがいる里紗先輩。

お母さんがいない私。

そんな私の前で、母親の話をしたことを後悔しているんだと思う。

……里紗先輩のことだから。
< 127 / 253 >

この作品をシェア

pagetop