ねこ先輩に「好き」を伝える方法。
「ずぶ濡れじゃんか……」



気が付けば。

私の制服は濡れて重くなっていた。


……雨に打たれていたんだ。

気が付かなかった。


空を見上げれば、雨粒が顔にあたる。



「な、んで……」



奏多先輩の、私を抱きしめる腕が強くなる。



「奏多先輩も濡れちゃいますよ」



教室に戻ってください。

そう言おうとしたその時。

柔らかくて温かいものが唇に触れた。


一瞬、時間が止まったかと思った。


今。

奏多先輩が私に、キスしたの……?


突然のことに体が動かなくなる。

私のファーストキス……。

初めての感覚にどうしていいのか分からなくなる。

だけど、心は奏多先輩であふれかえっていて。

こんな状況なのに、ドキドキしてしまう。

ドキドキしすぎて動けない。

石のように固まっている私を、再び奏多先輩は抱きしめた。
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