ねこ先輩に「好き」を伝える方法。
先輩の顔を直視できない。

直視できなくていいのかもしれない。


だって。



「結城 奏多」



名前を聞いてしまったら、我慢していた涙がこぼれてしまうから。

じんわりと目に涙が浮かぶ。

それを隠すように、うつむく私。



「……結城 奏多、だよ」



ゆうき、かなた……。

その名前を頭の中で何度もリピート再生する。

先輩の名前が頭から離れなくて。

思わず呟いてしまう。



「ユウさん……」



もし、先輩が“ユウさん”じゃないのなら。

『その人は誰?』って、笑ってみせてよ。

お願いだから、私の感情を、これ以上複雑にさせないで。


涙目で先輩を見つめる。

先輩が涙で、にじんで見える。

ブレザーをつかむ手が震える。

そんな私の右手に、先輩がそっと触れた。
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