ねこ先輩に「好き」を伝える方法。
「俺のこと、“奏多”でいいから。直接、“ユウさん”って呼ばれると違和感ある」



笑顔のユウさん……、奏多先輩。

奏多先輩、なんて呼ぶのは恐れ多い気もするけど。

先輩が、そう呼んでほしい、って言うなら“奏多先輩”って呼ばせてもらおう。



「さりげなく、芽衣ちゃんを奏多ワールドに引き込まないでよ?」

「奏多ワールドってなんだよ」

「女の子を虜にするお前の世界」



奏多先輩と颯汰先輩がじゃれはじめる。


……奏多ワールド。

女の子を虜にする世界。

……奏多先輩、格好良いもんね。


私はすでに奏多ワールドに取り込まれていると思う。



「新井くんの言うことなんて放っておきな?」



里紗先輩がため息をつく。

里紗先輩が呆れているってことは、“颯汰ワールド”も全開なんだ……。


そんなことを話していると、散らばっているノートがひとつにまとまった。

私は3人の先輩方にお礼を言う。

良かった。

これで、無事数学準備室に行ける。


ん?

待てよ。

私が3年生の階に来たのって、迷子になったからじゃない?

迷子のままだと、数学準備室にはたどり着かない……。


私はひとりで探すのを諦めた。
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