ねこ先輩に「好き」を伝える方法。
アバターを使って会話するから、お互い顔も見たことない。

どこに住んでいるのかも知らない。

本名も知らない。

知っているのは、年齢と声だけ。


ユウさんは高校3年生。

『受験勉強が大変だ』と、電話越しに嘆いていた。


初めて声を聞いたのは1か月くらい前のこと。

メッセージのやりとりがはずみすぎて、それなら、ゲーム内の通話機能を使って電話しよう……、と、なった。


初めて声を聞いたときはびっくりした。

甘くて優しい声が耳に触れた。

のんびりとした話し方で、包み込まれるような柔らかい声だった。


ピロンッ。

携帯の画面を見れば、ユウさんからのメッセージ。


『勉強、忙しすぎるー』


メッセージの最後に、泣き顔の絵文字がついている。

かわいい。

そんな些細なことでも、胸がきゅんとなる。


『私も頑張らないと!』


メッセージを送信してから、机の横にかけておいた鞄を肩にかける。

そろそろ帰ろう。


私は携帯を握りしめながら教室を出た。
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