ねこ先輩に「好き」を伝える方法。
奏多先輩も颯汰先輩も、声を震わす里紗先輩の話を静かに聞いている。



「男からお金をもらうような仕事なんて嫌い」

「……」

「私は母の仕事に納得がいかない」



里紗先輩は。

ずっと、苦しい思いをしてきたんだろう。


幼い頃に両親が離婚。

子供ながらに苦しみを覚えて、周りの目を気にして。

そうやって生きてきたんだろう。



「だから、私は男と関わろうと思わない。……母のように、周りから冷たい目で見られたくないから」



里紗先輩は知っているんだ。

里紗先輩のお母さんが夜の仕事をしていることで、お母さん自身が周囲から冷ややかな視線を送られていること……。


胸が締め付けられる。

里紗先輩が抱えている辛さ。

辛さの中には、きっと、悲しみを抱えている。

その悲しみは、私には、はかりしれないけれど。

でも、私が言えることはひとつだけ。



「……里紗先輩のお母さん、きっと、素敵な方なんですね」

「え……」



里紗先輩が顔を上げる。

戸惑いの表情を浮かべている里紗先輩。
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