ねこ先輩に「好き」を伝える方法。
「母の仕事は嫌いだけど。……母のことは嫌いじゃない」



そう、呟く里紗先輩は、お母さんのことが大好きなんだろう。

自分の親を、嫌う人なんていない。

親のことで苦しむことはあるかもしれないけれど。

それでも、親に助けられていて。

親に大切にされている。

それに気付ける人もいれば、気付けない人もいるかもしれないけれど。

それが、“子供”ってことなんじゃないかな。



「ありがと。……芽衣」



里紗先輩の背中に手を回す。

肩越しに、奏多先輩と颯汰先輩が見えた。

奏多先輩は柔らかく微笑んでいて。

颯汰先輩は、里紗先輩以上に泣いていた。

……颯汰先輩って、意外と泣くんだな。

なんて、こっそり思っていることは、秘密にしておく。



「芽衣」



里紗先輩が私の名前を呼ぶ。

変わらず、里紗先輩は私を抱きしめたまま。

先ほどとは違う柔らかな声で。



「受け止めてくれてありがとう」



はっきりした声で言ってくれた。
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