君と二人で
 急いで教室へ戻ると親友で隣の席の亜璃沙(ありさ)が私へぽんっと小さく折り畳まれたメモを投げてきた。

 私は先生にばれないようにそっとメモを開く。メモには、

『佐伯君に告白された?』

 と書かれてあった。佐伯君?誰?私はちらりと横目で見ている亜璃沙へ否定の意味を込め首を振ると、少し驚いた表情をした亜璃沙は、机に向かい何やら書くと、また、私の机にメモを投げた。

『今日の昼休み、隣のクラスの男子に声掛けられなかった?』

 ……あれって松田君でも松下君でもなくて、佐伯って名前だったんだ。私は、ぽりぽりと頬をかくと亜璃沙の寄越したメモへ名前知らなかったと返事を書いて彼女の机へと投げ返した。

 返事を読んだ亜璃沙はびっくりした顔で私を見ている。授業中なんですけど。案の定、亜璃沙が先生から注意を受けた。先生が亜璃沙から目を離すと、また机に向かい何かを書いている。私のことはもういいから授業に集中してよと思う。

『バレー部部長の佐伯君。イケメンで結構モテてるよ?本当に知らないの?』

『知らない。興味無い』

『マジすか?狙ってる子、多かったんだよ』

『私は狙ってないからどうでも良い』

 亜璃沙と何度かメモのやり取りを繰り返し、私はどうでも良くなって来たこともあり、『もう終わり』と書いて渡した。

 それからこの授業中に亜璃沙からのメモはこなくなった。そして、無事に今日一日の授業とLHRを全て終えると、園芸部へと急いだ。
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