イケメン年下男子との甘々同居生活♪
そしてこれから
 冬が来た。 
 人は四季を楽しむ、もちろん私も楽しんでいたが今年は特別な予感がしてならない。
 それは、今台所でご機嫌で朝ご飯を作っている彼氏の存在が大きいが……。

「体が怠い」

 私が目覚めると同時に彼も起きて、抱きしめ合っていると唐突に私の体を愛し始めた年下の樹くん。
 そりゃ、男性は朝になると一部分が元気なのは私でも知っている知識だけど、起きぬけに抱かれる回数も増えていた。
 彼なりに考えているようで、今日のような祝日などは特に多い気がする。

「求められるのは嬉しいし、気持ちもよいんだけど」

 問題があるとするなら、その日の始まりで既に体が怠くなってしまう。
 朝の薄暗い部屋で混じり合うのは別の意味でも気持ちが良い。
 ついつい、抱かれてしまうが起きるのが億劫だった。

「うぅ、起きたくない」

 それでも、少し開いたドアの隙間から美味しそうな香りが漂ってくると、頑張って起きて部屋をでた。
 
「ちょうど完成しましたよ」

 スッキリ、爽やかな笑顔でお皿をテーブルに並べてくれている。
 ラフな格好でゆったりと座ると、出来立ての朝食が並ぶ。 お互いの好みは把握しており、目玉焼きに塩派な私の目の前には既に瓶が用意されている。

 すっかり寒くなった外、元々出たがらない私たちは寒さも味方し一日中部屋の中で過ごすことも多くなった。
 ただ、この寒さに感謝したい場面もある。 それは……。

「よっしょ」

 ぽすんっと床で本を読んでいる彼の隣に腕と腕が振れる距離で座ると、お互いの体重を預け合っていく。
 密着する回数が断然多い、夏は汗や匂いを気にしていたが、それが今はないのでスキをみてはこうして甘えてしまう。
 適当にスマートフォンを弄り、隣からは本をめくる音だけが聞こえてくる。

「紗香さん」

「ん? なに?」

「ソファー使わないんですか?」

「樹くんが座ったら使うかも」

 付き合った当初は甘え方というのが遠い過去すぎて、思い出せなく大胆になれなかった。 
 でも、しだいに自然体で彼に甘えることができている。

「そうですか、それじゃっ」

 スッと立つと急に寒くなってしまう。
 樹くんがソファーに座ると膝の上をポンポンと叩いて合図を送ってくれた。
 私はそれに誘われるまま恋人の膝の上に座る。

「重くない?」

「全然、むしろ軽いぐらいですよ」

 嘘でも嬉しい。
 でも、実際に重いって言われたらショックなのでこの質問は自分の体重が変化していない、または減っているときのみ使うことにしているのは、秘密だ。
 
 本をテーブルに置いて、私を見つめてきてくれる。
 私もスマートフォンを床に置いて見つめ返すと、額と額が当たるぐらいまで近づき相手の頬をムニムニとつまんでみた。

「悔しい、全然伸びない痩せすぎ」

ふぁやさかんさんやめふぇ(紗香さんやめて)

 くぅ、なんて整った顔なのだろうか。
 しかも脱ぐとほんのり筋肉もついているので、意外としっかりしている。
 この人を目の前にすると、ふと思う事があった。
 
 よく私のことを好きになってくれたと……自分に自信があるわけではないし、綺麗でも可愛くもない。
 でも、きっちりと【神薙 紗香】を好きでいてくれている。
 それだけで十分嬉しかった。

 時間を忘れて二人だけの空間を楽しむ、このトロトロとぬるやかな空気が私たちを見守ってくれている。
 
「ねぇ、クリスマスどうする?」

 カレンダーに目を向けると、クリスマスの日付を見つめる。
 
「あぁ、えっと……どうしましょうか?」

 どうしましょうかって、まぁ、私も具体的にって言われてもピンとこない。
 何もなく、いつものようにこの家で過ごしても別にこちらは問題なかった。

「何か予定あるの?」

「いや、特にないのですが……」

 歯切れの悪い返事に、なんだかモヤモヤする。

「なによ、煮え切らない返事ね」

「うんと、えっと……すみません」

 苦笑して逃げられてしまう。
 問い詰めても良いのだけど、なんだか詮索するのは気が引けた。
 珈琲淹れますねと、私をそっとよせて立ち会がるとキッチンへ行ってしまう。

「むむむ、何か怪しい」

 一瞬浮気? という考えが浮かんだけれども、そんな感じはしないのできっと別だろう。
 そんな感じがしないって、かなり曖昧な感覚だけど女性の勘ってかなり敏感なので私生活でちょっとでも違和感を見つけてしまう。
 でも、そういったことはないのでおそらく浮気ではないと思った。

「でも、何かを隠しているのは間違いないわね」

 かなり気になるけれども、本人が黙っているのでこちらから詮索するのは気が引けてしまう。
 ちょっと面倒な女性(ヒト)だって思われた嫌だし……せっかく幸せな日々を送れているのを自分から壊したいとは思わない。
 
「とりあえず、要観察かしら?」

 小声で自分に言い聞かせていると、ちょうど珈琲が運ばれてくる。
 良い香りに鼻がくすぐられてしまう。

「お待たせいたしました」

「美味しそう」

「どうぞ」

 笑顔で差し出される飲み物を受け取って口に含むと、ふわっと素敵な香りに満たされる。
 彼の隠し事がなにか気になるけれど、今はこの美味しい時間を味わうために会話に集中することにした。
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