イケメン年下男子との甘々同居生活♪
冬の朝の通勤は億劫な場合が多い、特に一番の難所は寝床を出るタイミングである。
今まではギリギリまで眠っていることが多いけれども、現在は違った。
「行ってきます」
優しいキスが頬にあたる。
朝早くから会社に行って、昼に一度大学へ向かうそうで雑務をこなすために陽も登らないうちにでかけてしまう。
「私も起きないと……」
年下の彼が頑張っているのだから、私も頑張らないといけない。
ググっと背伸びをして気合をいれると、支度にとりかかる。
朝ご飯は樹くんが居ない日は基本手抜きである。
「メリハリって大事よね」
トーストの上に、ハムとケチャップにチーズをのせてトースターで焼いて出来上がり。
簡単だけど美味しいし、インスタントのスープもあるので、上々の朝食だと思う。
「さて、行きますか」
食器を洗って準備もまだなのに、仕事への意気込みをこめて呟く。
さっさとお化粧をおえて家を出ると、ぶるっと肌にさす風が吹いていた。
「今年の冬は寒いかも」
先週の天気予報では、今年の冬は例年以上に強い寒波が到来するらしく、注意が必要であると言っていた。
彼もそれを聞いて、スタッドレスタイヤを購入していたけれど、素人の私からするとどこが普通のタイヤと違うのかわからない。
溝がどうのこうのって説明されたけれど、ようは柔らかくて溝があって滑りにくい! と、いうことらしい。
「靴もそうなのかな?」
冬用の靴底がどうなっているのか思い出してみるが、普段見ない箇所なのでうまく思い出せない。
どうでもよいことを考えていても、時間は経過してしまう。
いつもの電車に乗るために、少し駆け足で向かっていく。
会社に到着すると、先日の私の彼氏騒ぎが嘘のように誰も聞いてこない。
人の噂も七十五日とはよく言ったもので、特にこの時期は他人の幸せがうっとおしい場合もあるので、自然と話題にはのぼらなくなっている。
「神薙さん、これできました! チェックお願いします」
「了解、メール送っておいて」
せっせと仕事に打ち込んで、ノルマとプラスαをこなしていくと夕方になっていた。
居残り組は誰もいない、唯一残っていた私もパソコンの電源を落として帰りの支度を整える。
外に出ると、朝とは違い若干の昼の暖かさを残した空気が漂う不思議な空間になっていた。
「ふぅ、寒い寒い」
キリっと冷えた空気が肺に入ると、体の芯から冷えてしまう。
今日のご飯は何にしようかな? なんて、考えながら家を目指していく。
昼に遅くなると連絡が入り、ちょっとテンションが下がってしまったが、無理やり上向かせるために家の近くのコンビニに寄っておでんを購入した。
「これよこれ」
家に到着して、蓋をあけてみるとフワッと出汁の香りと湯気がこぼれてくる。
となりには、冷えた缶ビールが置かれておりプシュっと音をたててひと口飲み込むと、大根をほろりと食べた。
「美味しい!」
この小さな贅沢がたまらなく好きだ。
ただ、一人暮らしをしているころはそれで充分だったのに今はどこか寂しさを感じてしまう。
広くて素敵だと思った部屋の真ん中に設置されたテーブル、なぜか真ん中よりちょっとズレて座ってしまっている。
この角度から見る彼の顔が好きで、食べにくくないですか? って言われたときもあるけれど、全然むしろこの角度が良いのよ! と、力説した。
「むぅ……」
ちくわぶをかじると、じゅわっと美味しさが口を満たしてくれる。
それも一瞬のことで、すぐに樹くんの影を求めてしまう。
「こ、これは思った以上に重症かもしれない」
自分で頭を抱えてしまう。
こうなったら! バンっと冷蔵庫をあけて私専用の最奥に封印されたお酒を取り出して準備をした。
ビールは小さいサイズだったので、飲み切り先日一緒に購入したお揃いのグラスを用意すると氷を入れてトクトクと琥珀色の液体を注ぎ込む。
「くぅぅぅ、き、きくわね」
ロックなんていつ以来かしら? カランっと氷が音をたてて崩れるのを人差し指で弾くとピンっとお酒と水がグラスの中でゆっくりと混ざり合う。
右手にはおでん、左手には強いお酒となんだかアンバランスな気もするけれど、この組み合わせも悪くない。
「さて、食べますか」
少し冷めつつある汁を飲みこんでからお酒を入れる。
温かな液体と冷えたものが胃の中でグルグルと溶け合っていくのがわかった。
「これは確実に酔うわね」
でも、それがちょうどよかった。
少し強いお酒は樹くんの存在を希薄にしてくれる。
彼が帰ってくるまでと思ってついつい、二杯目を注ぎ込んでしまう。
視界がトロトロになってきた頃合いに、玄関の扉が開く音が聞こえてきた。
「ただいまって……おでん?」
部屋に入るなり、クンクンと鼻を動かせて匂いを嗅いでいる。
「おかえりなさい」
ひらひらと手を動かして愛しい人に挨拶をする。
「紗香さん、飲んでいますか?」
「ダメ? ちょっと飲みたかったから」
明日も仕事はある。
深酒はしないつもりだったけれど、なんだか酔いがまわるのが早い気がする。
「いや、ダメじゃないですが」
苦笑しながら私の前に座ると、カバンからテイクアウトしてきた牛丼と緑茶のペットボトルを取り出して食べ始めた。
「いいな、俺もおでんにすればよかったかも」
「美味しかったわよ」
悔しそうに牛丼を食べ始める。
どうしよう、凄く美味しそうだ……私ってお酒が入るとお腹が空くタイプで限界はあるけれどついつい食べてしまう。
「忙しいの?」
「……ちょっと忙しいかもしれません、大学が殆ど終わっていてくれて助かってます。でも、ちょっとキツイかもしれませんが、頑張りどころかもしれません」
目の下に疲れが見え始めている。
私は頑張る彼を応援したい、でも、寂しさを感じてしまうのは事実でこれはワガママだって自覚していた。
私は立ち上がって樹くんの隣座ると、すっと頭を肩にのせて目を閉じる。
「どうしたんですか? 食べにくいんですが」
「知っているわよ。 でも、こうしたいの、ダメ?」
「んっと、ダメ……じゃないですよ」
彼も自分の頭を私に重ねてくれた。
牛丼とおでんの香りがする部屋で、ちょっとだけ心が満たされる。
今まではギリギリまで眠っていることが多いけれども、現在は違った。
「行ってきます」
優しいキスが頬にあたる。
朝早くから会社に行って、昼に一度大学へ向かうそうで雑務をこなすために陽も登らないうちにでかけてしまう。
「私も起きないと……」
年下の彼が頑張っているのだから、私も頑張らないといけない。
ググっと背伸びをして気合をいれると、支度にとりかかる。
朝ご飯は樹くんが居ない日は基本手抜きである。
「メリハリって大事よね」
トーストの上に、ハムとケチャップにチーズをのせてトースターで焼いて出来上がり。
簡単だけど美味しいし、インスタントのスープもあるので、上々の朝食だと思う。
「さて、行きますか」
食器を洗って準備もまだなのに、仕事への意気込みをこめて呟く。
さっさとお化粧をおえて家を出ると、ぶるっと肌にさす風が吹いていた。
「今年の冬は寒いかも」
先週の天気予報では、今年の冬は例年以上に強い寒波が到来するらしく、注意が必要であると言っていた。
彼もそれを聞いて、スタッドレスタイヤを購入していたけれど、素人の私からするとどこが普通のタイヤと違うのかわからない。
溝がどうのこうのって説明されたけれど、ようは柔らかくて溝があって滑りにくい! と、いうことらしい。
「靴もそうなのかな?」
冬用の靴底がどうなっているのか思い出してみるが、普段見ない箇所なのでうまく思い出せない。
どうでもよいことを考えていても、時間は経過してしまう。
いつもの電車に乗るために、少し駆け足で向かっていく。
会社に到着すると、先日の私の彼氏騒ぎが嘘のように誰も聞いてこない。
人の噂も七十五日とはよく言ったもので、特にこの時期は他人の幸せがうっとおしい場合もあるので、自然と話題にはのぼらなくなっている。
「神薙さん、これできました! チェックお願いします」
「了解、メール送っておいて」
せっせと仕事に打ち込んで、ノルマとプラスαをこなしていくと夕方になっていた。
居残り組は誰もいない、唯一残っていた私もパソコンの電源を落として帰りの支度を整える。
外に出ると、朝とは違い若干の昼の暖かさを残した空気が漂う不思議な空間になっていた。
「ふぅ、寒い寒い」
キリっと冷えた空気が肺に入ると、体の芯から冷えてしまう。
今日のご飯は何にしようかな? なんて、考えながら家を目指していく。
昼に遅くなると連絡が入り、ちょっとテンションが下がってしまったが、無理やり上向かせるために家の近くのコンビニに寄っておでんを購入した。
「これよこれ」
家に到着して、蓋をあけてみるとフワッと出汁の香りと湯気がこぼれてくる。
となりには、冷えた缶ビールが置かれておりプシュっと音をたててひと口飲み込むと、大根をほろりと食べた。
「美味しい!」
この小さな贅沢がたまらなく好きだ。
ただ、一人暮らしをしているころはそれで充分だったのに今はどこか寂しさを感じてしまう。
広くて素敵だと思った部屋の真ん中に設置されたテーブル、なぜか真ん中よりちょっとズレて座ってしまっている。
この角度から見る彼の顔が好きで、食べにくくないですか? って言われたときもあるけれど、全然むしろこの角度が良いのよ! と、力説した。
「むぅ……」
ちくわぶをかじると、じゅわっと美味しさが口を満たしてくれる。
それも一瞬のことで、すぐに樹くんの影を求めてしまう。
「こ、これは思った以上に重症かもしれない」
自分で頭を抱えてしまう。
こうなったら! バンっと冷蔵庫をあけて私専用の最奥に封印されたお酒を取り出して準備をした。
ビールは小さいサイズだったので、飲み切り先日一緒に購入したお揃いのグラスを用意すると氷を入れてトクトクと琥珀色の液体を注ぎ込む。
「くぅぅぅ、き、きくわね」
ロックなんていつ以来かしら? カランっと氷が音をたてて崩れるのを人差し指で弾くとピンっとお酒と水がグラスの中でゆっくりと混ざり合う。
右手にはおでん、左手には強いお酒となんだかアンバランスな気もするけれど、この組み合わせも悪くない。
「さて、食べますか」
少し冷めつつある汁を飲みこんでからお酒を入れる。
温かな液体と冷えたものが胃の中でグルグルと溶け合っていくのがわかった。
「これは確実に酔うわね」
でも、それがちょうどよかった。
少し強いお酒は樹くんの存在を希薄にしてくれる。
彼が帰ってくるまでと思ってついつい、二杯目を注ぎ込んでしまう。
視界がトロトロになってきた頃合いに、玄関の扉が開く音が聞こえてきた。
「ただいまって……おでん?」
部屋に入るなり、クンクンと鼻を動かせて匂いを嗅いでいる。
「おかえりなさい」
ひらひらと手を動かして愛しい人に挨拶をする。
「紗香さん、飲んでいますか?」
「ダメ? ちょっと飲みたかったから」
明日も仕事はある。
深酒はしないつもりだったけれど、なんだか酔いがまわるのが早い気がする。
「いや、ダメじゃないですが」
苦笑しながら私の前に座ると、カバンからテイクアウトしてきた牛丼と緑茶のペットボトルを取り出して食べ始めた。
「いいな、俺もおでんにすればよかったかも」
「美味しかったわよ」
悔しそうに牛丼を食べ始める。
どうしよう、凄く美味しそうだ……私ってお酒が入るとお腹が空くタイプで限界はあるけれどついつい食べてしまう。
「忙しいの?」
「……ちょっと忙しいかもしれません、大学が殆ど終わっていてくれて助かってます。でも、ちょっとキツイかもしれませんが、頑張りどころかもしれません」
目の下に疲れが見え始めている。
私は頑張る彼を応援したい、でも、寂しさを感じてしまうのは事実でこれはワガママだって自覚していた。
私は立ち上がって樹くんの隣座ると、すっと頭を肩にのせて目を閉じる。
「どうしたんですか? 食べにくいんですが」
「知っているわよ。 でも、こうしたいの、ダメ?」
「んっと、ダメ……じゃないですよ」
彼も自分の頭を私に重ねてくれた。
牛丼とおでんの香りがする部屋で、ちょっとだけ心が満たされる。