Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―
彼女が自分から愛人になると俺に言ったのだ、それなら上げ膳据え膳、いただくのが男というものである。
寝室に連れ込んで、喪服姿の彼女を裸に剥いて抱いた。
無垢な彼女を強引にひらいた俺は、亡き夫が与えなかった悦びを彼女に味わわせたかったが、はじめての彼女は痛みしか感じなかったらしい。翌朝、俺だけが亡き夫を出し抜いた一時的な満足感を得ていた現実を知り、愕然としてしまった。
次は気持ちよくしてやると言ったら「最低」と返されてしまった。それ以来、どうすればいいかわからず、彼女に軽くふれることしかできないでいる。
ほんとうならもっと深く愛したいのに。
彼女をこれ以上傷つけたくないと自信喪失中の俺は、その後は蛇の生殺し状態で、毎日を同じ寝室で過ごしているのだった。