Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―
どうすれば彼女にこの熱い気持ちを伝えられるのだろう……そう考えるのと同時に、正直な言葉が口から飛び出していた。
「すきだ!」
脈絡のない告白に、ネメが目を丸くしている。そういえば彼女に結婚したいとは何度も言っていたが、すきだ、愛してると伝えたことは一度もなかった。
けれど、ネメは信じられないと口を噤んだまま、左右に首を振って拒もうとする。彼女の瞳が潤んでいることに気づいた俺は、勢いのままに言葉を紡いで、彼女に愛を乞うていた。
「すきなんだよ。ずっとずっと……ずっと。華やかな世界から退いたいまも、俺の気持ちは変わらないままだ。バツがつこうがつくまいが、俺はネメを愛人止まりにさせたくない……屋敷も土地もピアノもお前もぜんぶ俺が守るから、どうか、俺との結婚を本気で考えてくれないか――……」