Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―
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三日三晩かけて彼女に求婚し、ようやく寝台の上で彼女から「是」という応えをもらった翌朝。
目を真っ赤に腫らしたネメにリストの「愛の夢 第三番」を弾いていた俺のところへ客人が現れた。スーツケースを持った立花だ。
俺とネメは身なりを整えて、応接間へ向かう。そこには立花以外にも、ふたりのスーツ姿の男がいた。
「社長、お待たせいたしました。援軍を連れてまいりましたよ」
「援軍?」
そっくりな顔立ちをしたふたりを前に、俺は凍りつく。
「アキフミお兄ちゃん、元気ぃ!」
「多賀宮の生意気なお嬢ちゃんはオレたちに任せとけ。あと、お袋にアキフミ兄ちゃんがご執心なのはピアノじゃなくて初恋のひと本人だって言っておいたから安心して」
「……安心できるかっ!」
父親違いの年齢の離れた双子の弟、フミヤとタカヤが、どうやら俺の援軍らしい。援軍? と呼べるほどの戦闘力もなさそうだが……
恨めしそうに立花を睨むが、彼女はくすくす笑っている。
「ひとりで暗く思い悩まれるより、仲のいい弟さんたちと話し合われた方が最善の道が開けると思った、それだけのことですよ」
「別に仲は良くないぞ……」