Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―

「ネメさんの相続が落ち着いたら、なんて言っていたら他の男に掻っ攫われちゃうよ、アキフミお兄ちゃん」

 雲野ホールディングスの御曹司のことも調査済みらしい。立花が「どっちが良縁かってきかれたら常識的には雲野さんです」とあっさり伝えてきたが、それを聞いたネメが「わたしは紡さんとは結婚しません」ときっぱり言い放ったのを見て「が、社長もいい男ですよ」と俺をフォローする。

 昨晩の彼女を思い出し、だらしない表情になってしまった俺を、呆れたように弟たちが見つめている。

「なんだか心配して損したかも。お兄ちゃんとネメさん、ラブラブじゃない。いいなあ初恋のひととの結婚」
「彼女なら義父さんも認めてくれると思うけどなあ」

 ラブラブ? とネメの方を見れば、彼女も困った顔をして、けれども嬉しそうに頬を赤らめている。俺のことを、愛人以上に想ってくれるのだろうか。

「だけど……アキフミ」
「ネメ。言っているだろ。俺はお前がバツイチだろうが、気にしないし、両親にも社員たちにもお前を認めさせてやるって」
「そうじゃないの……」

 何が?
 俺が首を傾げると同時に、来客を告げるチャイムが鳴った。
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