Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―
chapter,4
シューベルトと初恋花嫁の秘密《1》
ドビュッシーの「月の光」を淋しそうに奏でていたアキフミに「すきだ」と告白されたわたしは、自分の気持ちがすでに彼のモノになっていることを悟ってしまった。亡き夫への罪悪感よりも、彼とともに未来を創りたいと希う気持ちの方が、日に日に強くなっていたことを思い知らされて、感極まって涙してしまう。
そのまま寝室に抱っこされたまま連れていかれ、いままで以上に甘くて手放しがたい彼との夜をわたしは過ごした。夕方のお仕置きとは違う、名残惜しくなるような時間だった。
次の日も、その次の日も。ピアノを弾かせてもらえないほど、彼はわたしの身体を奏でつづけた。もう、手放さないと、アイシテルと囁かれた三日目の夜。
わたしはついに、彼の求婚に「是」と頷いた。