Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―
結婚へのハードルがどうなるかは、わたしの戸籍謄本を確認してからになるだろう。
車の免許を持っていないわたしがひとりで外に出ることは厳しかったので、郵送で紡に委任状を渡して代理人請求をお願いしている。三日もあれば、取り寄せられるときいたので、そろそろ彼が現物を持ってきてくれるはずだ。
「だけど……アキフミ」
「ネメ。言っているだろ。俺はお前がバツイチだろうが、気にしないし、両親にも社員たちにもお前を認めさせてやるって」
「そうじゃないの……」
バツイチじゃないかもしれない。
アキフミの心配を和らげてあげられるのは嬉しい。
夫の死からもうすぐ三ヶ月。
もしバツイチだったとしても。
アキフミが最初に口にしていた「百日の制限」はまもなく訪れる。
きっとアキフミは何があっても起こってもわたしを妻に迎えるはず。
だから不安になってしまった。「しあわせになってもいいの?」、そう彼に言おうとしたそのとき。
来客を知らせる玄関のチャイムが鳴った……