Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―

「なんだか俺ばっかりネメを求めてる気がする。手を伸ばせばすぐ傍にいるのに、いつか消えてしまうのではないかと不安になって、必要以上に抱いてしまう」
「消えたりなんか、しないよ。アキフミはわたしに愛してるって、たくさん、たくさん囁いてくれるもの……夫は死ぬまで一度も、わたしに愛してるって、言わなかったもの」
「愛してほしかったのか」
「わからない……あのとき空っぽのわたしを守ってくれた夫が、見返りに身体を求めていたら、たぶんわたしは」
「言わなくていい」
「ンっ」

 事実婚関係で、白い結婚状態にあったわたしは、アキフミに求められたことで、女になった。
 それでも彼は過去のわたしと夫に嫉妬心をめらめらと燃やす。
 わたしの言葉を奪う口づけをして、そのまま寝台へ押し倒したアキフミは、わたしのあたまを撫でながら、やさしく告げる。

「毎日でも愛してるって、言ってやる。お前を、ネメを愛してるって」
「……アキフミ」
「俺にはお前しかいないんだ。今に見てろ、誰からも祝福される花嫁にしてやるから」
「うん」
「両親にも会社の人間にも、俺が愛するネメを、見せびらかしてやるんだからな」
「うん」
「ネメ。愛してる」

 深い口づけに酔わされながら、わたしは彼の手で生まれたての姿になる。
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