Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―
「あ、わたしが持ってる白いストールならこの服に合わせやすいと思う! たしか寝台の下の引き出しに……」
わたしが寝台の下の引き出しを開こうとその場にしゃがんだのを見て、アキフミがくすりと笑う。
「スカートが短いとお前のすらりとした足がよく見えて眼福だな」
「きゃ、見ないでよ変態」
「だからストールよりもロングカーディガンの方がいい」
「え。それどういう理屈?」
わたしが引き出しから白いスツールと、その隣に仕舞われていたレースのロングカーディガンを取り出せば、彼が勝ち誇ったように告げる。
「俺以外にその眩しい太ももを見せたくないってことさ」
かつて、制服のスカートをなめられないように短くしろと命じておきながら実際に短くしたわたしに「俺以外の男に見せたくない」と言っていたアキフミ。いまもむかしも変わらない彼の言葉に、わたしは感慨深くなる。
自分がわたしのミニスカート姿を見たがっていたくせに、実際に出かけるときはロングカーディガンを着て下半身を隠せと言う彼に、わたしもまたくすりと笑ってしまう。
「だけど、この服装でデートに行きたいんでしょ?」
「だからだよ」
ぷいっと顔をそむけた彼の耳が赤くなっているのを見て、わたしは頷く。
「わかった。カーディガンにするから拗ねないで」