Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―
「だから地味で上品なネクタイもいいんだけど、もうすこしパンチの効いたネクタイが」
「じゃあ、これなんかどう?」
先程失敗を恐れて地味で上品なものを選んでしまったわたしは、彼の言葉を遮るようにピンク色のネクタイを指差す。グレーのスーツなら意外とピンク系でも似合うだろうな、でもアキフミがピンクをつかうのは想像できないな、と思った矢先の彼の指摘だ。てっきりそれはないだろうと顔を顰めるだろうと思ったのに……
「わかった、これも買う」
そう言って、彼はあっさりわたしが選んだ二本のネクタイをレジへと持っていったのだった。