Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―
長野支社で火傷した彼女をシャワー室に連れ込んで我慢できずにふれてしまったときのことを思えば、こんな風に嫌がるそぶりを見せながらも素直に俺の腕のなかで甘えてくれるなんて夢のようだ。いや、もしかしたら俺はずっと、夢を見ているのかもしれない。初恋の彼女を自分の花嫁にするために、諦めきれずに追い求めていたのだから。
「その変態と結婚するんだよ、ネメは」
「う……そ、それはそうなんだけど」
しどろもどろになりながらネメは顔を隠してしまう。
そんな彼女を愛おしく思いながら、俺はゆっくりと三号棟へつづく階段をのぼり、木製の扉に鍵を差し込んだ。