Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―
想いを託されたシューベルト《3》
山道でぬかるみにはまって泥だらけになったネメを脱がせ、俺も裸になってさっそくコテージの浴室を利用した。窓から見える煙がかったウッディグリーンの山々の光景を背に、白っぽい大理石の浴槽にたっぷりの湯を沸かし、俺から逃げようとする彼女を可愛がりながら綺麗にしてやった。俺の方が彼女に夢中になって危うくのぼせてしまうところだったほど、浴室では有意義なひと時を過ごしたのだ。
「ばかっ、へんたいっ、もう知らないっ!」
「……ネメがいちいち可愛すぎる反応するのが悪い。俺の知らない色っぽい顔まだまだ隠しやがって」
「だ、だってあれはアキフミが……ッ」
「俺が、何?」
「ン――……」
風呂上りにも一悶着あったのだが、俺のキスで彼女はあっさり白旗をあげてしまう。
永遠に彼女をこのコテージに閉じ込めて可愛がりたい、素肌を晒したまま監禁したいほどの危険な妄想さえあたまによぎってしまい、俺は慌てて彼女を自分の腕から解放するのだった。