Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―
「アキフミ」
「……キス、していいか」
「だめ……だって、ぁ……」
「もう遅いよ」
顎を手でくいっと持ち上げられ、口づけられる。
挨拶のキスとはぜんぜん違う、情熱的な彼のキスに、わたしは翻弄されてしまう。
シャワーの音が、わたしとアキフミの淫らな接吻をかき消してくれるから、彼は調子に乗って、わたしの身体の線をなぞりながら、キスを深くしていく。
「アキ、フミっ」
「ネメ。俺の手で啼いて」
「もぉっ、知らないっ……!」
いままで知らなかった気持ちいいことを、教えられて、身体が作り変えられていく。
彼の手で奏でられるわたしの甘い啼き声も、シャワーの音にかき消されていた。
考えなくてはいけないことがたくさんあるはずなのに、彼に身を委ねているうちに、すべてがどうでもよくなってしまって……
結局、この後のデートの予定は後日に持ち越されることになるのだった。