【コミカライズ化】異世界で絶倫魔導師に買われたらメチャクチャ溺愛されています。
10.お姫さま抱っこで安心していられませんっ!
瞼を開けると、そこには驚くほど美しい男の顔があった。
月の光を散りばめたような銀色の髪に、ルビーみたいな瞳。
切れ長の目じりに、高い鼻梁。形のいい唇。
すべての配置が、芸術的なまでに整っている。
「あ……」
(な、なぜ、目の前に超絶イケメンが? それも海外モデルみたいな!)
ひとしきり、寝ぼけた頭でこれまでのことを思い出す。
リンは今、ヴィツィニル王国という異世界の国にいるのだ。
聖女だか王妃だか知らないが勝手に召喚され、憎らしい王太子に愛人にするとのたまわれ――
反抗したらとっとと追放され、城下町で捕まって、奴隷として売られそうになり――
間一髪のところで、イケメン魔導師に助け出されて――
(なんか、変な気分になるお香を嗅がされたのよ。そのせいで……)
身体中が熱く火照り、下腹の奥から言いようのない疼きが込み上げ、両脚の奥から熱いなにかが噴き出してしまった。
そうしたら彼――パーシヴァルが、リンの熱を冷ましてくれたのだ。
(あ……あんな、えっちな方法を取るとは思わなかったけどっ……)
真っ赤な顔で狼狽えるリンを、パーシヴァルが首を傾げて見下ろしている。
秘所を弄られまくって、頭が真っ白になってしまって、恥ずかしくてどうしていいのかわからない。
パーシヴァルが長い指を、ふっくらとした色気のある唇にあて、リンを凝視している。
(見つめられたら、さっきの痴態を思い出しちゃう。どうしよう……あの先に進んだら……)
「リン」
「は、はいぃっ……!」
びくんと身体を震わせるリンに、パーシヴァルが得体の知れないものを見るような顔を向けてきた。
「着いたから、さっさと馬車から降りてくれ」
「あ、はい。すみません……」
「まだ寝ぼけているのか? 涎が顎まで垂れてるぞ」
小馬鹿にしたような口調で言われ、慌てて手の甲で口もとを拭う。
(うーん……美形って、辛辣でも許される感があるな。美形無罪……うん)
リンは馬車の座席で、ぐっすりと寝入ってしまっていたらしい。
ゆっくりと上体を起こし、スカートの裾を直す。
(なんか、いい夢見たなあ……思い出せないけど)
パーシヴァルは、とっとと馬車から降りてしまった。
ジャケットの胸ポケットから札を出し御者に渡すと、御者は悲鳴に似た声をあげる。
「こ、こんなに! ありがとうございます」
「ランスの森を抜けてくれた礼だ」
「いつもならもっと魔物が出てくるんでしょうが、今日は珍しく出てきませんでしたねえ」
「私が魔除けの術をかけたのでね。帰りまで持つだろう」
「おお、魔術をお使いになられるのですか! それは珍しい……」
(ランスの森には、魔物がうようよいるって言ってたっけ。魔導師ってのは本当なのね)
パーシヴァルと御者の話を小耳に挟みつつ、リンも馬車から降りようとした。
取っ手を持ち、タラップに足をかけた瞬間――
「きゃぁっ!」
「なに?」
足に力が入らなくて、うまくタラップを下りられなかったリンは、そのまま顔面から倒れそうになってしまった。
(やばい! 踏ん張れない!)
しかし、地面に顔を強打することはなかった。
「おい、大丈夫か?」
「は、はぁいぃ……」
パーシヴァルが腕を差し出して、リンの身体をしっかりと支えてくれたからである。
「足に力が入らなくて……」
「媚薬がまだ残っているのかもしれんな。手のかかる娘だ」
そう言うと、ひょいとリンを横向きで抱き上げてしまった。
(これは、もしかして、お姫さま抱っこというものでは!?)
(彼氏イナイ歴18年! 付き合ったこともなければ、男の子と手を繋いだこともない私に、お姫さま抱っこをされる日がくるなんて!)
リンは抱き上げられたまま、頭をブンブンと左右に振った。
(いやいや! それよりも、誰にも触られたことのない部分を弄られたことのほうがショックだよ)
チラリと上目遣いでパーシヴァルを見るが、彼はまったくどうでもいいという表情だ。
(私だけ意識しちゃっているみたい……?)
パーシヴァルが何食わぬ顔で、そのままスタスタと歩いて行く。
御者は嬉しそうに一礼して、鞭をしならせ馬を走らせて門を出ていった。
リンは抱きかかえられたまま、上を見上げた。
石造りの城は迫力があって、壮観であった。
追い出された王城は飾り立てられた華美なものだったが、ここは堅牢な赴きだ。
(なんといえばいいのかな。王城は某テーマパークのプリンセス城みたいだったけど、こっちは中世の古城っぽい?)
「お帰りなさいませ。ご主人さま」
「お帰りなさーい。パーシヴァルさま」
初老の男性と、推定12歳くらいの少年がエントランスに立っていた。
(彼らが執事と下男だわ! なんだかイメージどおり)
初老の男性は、黒い燕尾ジャケットに黒いズボン、白いシャツに黒ベスト。
白い手袋に、片眼鏡をかけておりマンガに出てくる執事そのものといった服装だ。
少年はポロシャツとオーバーオールの短パンに、ハイソックスとスニーカーという、そのへんにいる子どものような格好をしていた。
頬をぷうっと膨らませて、生意気そうにリンを睨みつけてくる。
「住み込みの小間使いを探しに行くとお伺いしておりましたが……」
執事が片眼鏡をスチャスチャして、パーシヴァルの腕の中にいるリンを訝しそうに凝視してくる。
「どこからどう見ても、普通の女の子のようですが」
(執事と下男に気に入られたら、本採用とする。それまでは居候ということにする)
そんな言葉が脳裏に蘇り、リンは慌ててパーシヴァルに懇願した。
「下ろしてください」
慌てて地面に足をつくと、リンは深々と頭を下げた。
(ご主人さまに抱っこされてる小間使いとかマズいよね。わわっ、どうしよう。第一印象最悪になっちゃう)
「あのっ……はじめまして。私、リンと……」
リンの挨拶を遮るように、下男の少年が口を歪ませて
「うっわ~、ないわ。こりゃないわ。そのへんの猫でもひとりで歩けるじゃん。なに? この役立たずっぽいの」
リンの顔面は、一瞬で真っ青に染まってしまった。
月の光を散りばめたような銀色の髪に、ルビーみたいな瞳。
切れ長の目じりに、高い鼻梁。形のいい唇。
すべての配置が、芸術的なまでに整っている。
「あ……」
(な、なぜ、目の前に超絶イケメンが? それも海外モデルみたいな!)
ひとしきり、寝ぼけた頭でこれまでのことを思い出す。
リンは今、ヴィツィニル王国という異世界の国にいるのだ。
聖女だか王妃だか知らないが勝手に召喚され、憎らしい王太子に愛人にするとのたまわれ――
反抗したらとっとと追放され、城下町で捕まって、奴隷として売られそうになり――
間一髪のところで、イケメン魔導師に助け出されて――
(なんか、変な気分になるお香を嗅がされたのよ。そのせいで……)
身体中が熱く火照り、下腹の奥から言いようのない疼きが込み上げ、両脚の奥から熱いなにかが噴き出してしまった。
そうしたら彼――パーシヴァルが、リンの熱を冷ましてくれたのだ。
(あ……あんな、えっちな方法を取るとは思わなかったけどっ……)
真っ赤な顔で狼狽えるリンを、パーシヴァルが首を傾げて見下ろしている。
秘所を弄られまくって、頭が真っ白になってしまって、恥ずかしくてどうしていいのかわからない。
パーシヴァルが長い指を、ふっくらとした色気のある唇にあて、リンを凝視している。
(見つめられたら、さっきの痴態を思い出しちゃう。どうしよう……あの先に進んだら……)
「リン」
「は、はいぃっ……!」
びくんと身体を震わせるリンに、パーシヴァルが得体の知れないものを見るような顔を向けてきた。
「着いたから、さっさと馬車から降りてくれ」
「あ、はい。すみません……」
「まだ寝ぼけているのか? 涎が顎まで垂れてるぞ」
小馬鹿にしたような口調で言われ、慌てて手の甲で口もとを拭う。
(うーん……美形って、辛辣でも許される感があるな。美形無罪……うん)
リンは馬車の座席で、ぐっすりと寝入ってしまっていたらしい。
ゆっくりと上体を起こし、スカートの裾を直す。
(なんか、いい夢見たなあ……思い出せないけど)
パーシヴァルは、とっとと馬車から降りてしまった。
ジャケットの胸ポケットから札を出し御者に渡すと、御者は悲鳴に似た声をあげる。
「こ、こんなに! ありがとうございます」
「ランスの森を抜けてくれた礼だ」
「いつもならもっと魔物が出てくるんでしょうが、今日は珍しく出てきませんでしたねえ」
「私が魔除けの術をかけたのでね。帰りまで持つだろう」
「おお、魔術をお使いになられるのですか! それは珍しい……」
(ランスの森には、魔物がうようよいるって言ってたっけ。魔導師ってのは本当なのね)
パーシヴァルと御者の話を小耳に挟みつつ、リンも馬車から降りようとした。
取っ手を持ち、タラップに足をかけた瞬間――
「きゃぁっ!」
「なに?」
足に力が入らなくて、うまくタラップを下りられなかったリンは、そのまま顔面から倒れそうになってしまった。
(やばい! 踏ん張れない!)
しかし、地面に顔を強打することはなかった。
「おい、大丈夫か?」
「は、はぁいぃ……」
パーシヴァルが腕を差し出して、リンの身体をしっかりと支えてくれたからである。
「足に力が入らなくて……」
「媚薬がまだ残っているのかもしれんな。手のかかる娘だ」
そう言うと、ひょいとリンを横向きで抱き上げてしまった。
(これは、もしかして、お姫さま抱っこというものでは!?)
(彼氏イナイ歴18年! 付き合ったこともなければ、男の子と手を繋いだこともない私に、お姫さま抱っこをされる日がくるなんて!)
リンは抱き上げられたまま、頭をブンブンと左右に振った。
(いやいや! それよりも、誰にも触られたことのない部分を弄られたことのほうがショックだよ)
チラリと上目遣いでパーシヴァルを見るが、彼はまったくどうでもいいという表情だ。
(私だけ意識しちゃっているみたい……?)
パーシヴァルが何食わぬ顔で、そのままスタスタと歩いて行く。
御者は嬉しそうに一礼して、鞭をしならせ馬を走らせて門を出ていった。
リンは抱きかかえられたまま、上を見上げた。
石造りの城は迫力があって、壮観であった。
追い出された王城は飾り立てられた華美なものだったが、ここは堅牢な赴きだ。
(なんといえばいいのかな。王城は某テーマパークのプリンセス城みたいだったけど、こっちは中世の古城っぽい?)
「お帰りなさいませ。ご主人さま」
「お帰りなさーい。パーシヴァルさま」
初老の男性と、推定12歳くらいの少年がエントランスに立っていた。
(彼らが執事と下男だわ! なんだかイメージどおり)
初老の男性は、黒い燕尾ジャケットに黒いズボン、白いシャツに黒ベスト。
白い手袋に、片眼鏡をかけておりマンガに出てくる執事そのものといった服装だ。
少年はポロシャツとオーバーオールの短パンに、ハイソックスとスニーカーという、そのへんにいる子どものような格好をしていた。
頬をぷうっと膨らませて、生意気そうにリンを睨みつけてくる。
「住み込みの小間使いを探しに行くとお伺いしておりましたが……」
執事が片眼鏡をスチャスチャして、パーシヴァルの腕の中にいるリンを訝しそうに凝視してくる。
「どこからどう見ても、普通の女の子のようですが」
(執事と下男に気に入られたら、本採用とする。それまでは居候ということにする)
そんな言葉が脳裏に蘇り、リンは慌ててパーシヴァルに懇願した。
「下ろしてください」
慌てて地面に足をつくと、リンは深々と頭を下げた。
(ご主人さまに抱っこされてる小間使いとかマズいよね。わわっ、どうしよう。第一印象最悪になっちゃう)
「あのっ……はじめまして。私、リンと……」
リンの挨拶を遮るように、下男の少年が口を歪ませて
「うっわ~、ないわ。こりゃないわ。そのへんの猫でもひとりで歩けるじゃん。なに? この役立たずっぽいの」
リンの顔面は、一瞬で真っ青に染まってしまった。