【コミカライズ化】異世界で絶倫魔導師に買われたらメチャクチャ溺愛されています。
4.お金と着替えを盗られてしまいました…しょぼーん……
30分ほど歩いただろうか――
凜は活気のある市場に、足を踏み入れた。
「うわぁ……すごいっ」
どこまで露店が並び、さまざまなものが売っていた。
野菜、果物といった生鮮食品から、ハムやチーズといった加工食品。
可愛い服や靴、鞄やアクセサリーを売っている店もあるし、食器や家具を売っている店もある。
(楽しそう。ちょっと見たいな)
どこからかよい香りがしたので、鼻をクンと鳴らす。
目線を移すと、大きな鉄板の上で、ジュージューと美味しそうな音を鳴らし、元の世界でいう焼きそば的なものを炒めている。
店主がソースをたっぷり振りかけると、ジュワッといい音がした。
空腹を感じた凛は、ごくりと喉を鳴らす。
(そういや、こっちにきてから、ちゃんとした食事をしてないよ)
着替えるときに、パンとフルーツジュースを出してくれたが、あまり好みの味ではなかった。
パンは唾液を根こそぎ持っていきそうなほどパッサパサで、フルーツは甘みがまったくなく、薄味だった。
こっちの世界の食事はイマイチだなあと思っていたのだが、目の前の焼きそばっぽいものは、香りもビジュアルも好みである。
(ええと……路銀としてお金をもらっていたっけ……)
がさごそとバッグを漁り、革袋を取り出す。
中から硬貨をなん枚か取り出し、ぎゅっと握りしめた。
(無駄使いはしたくないけど、空腹は辛いしね)
列の最後尾に並んで、前方のひとたちが、どう注文するのか探ってみる。
「おじさん。1人前」
「こっちは2人前」
1人前のときは、大き目の銀銅貨を1枚。2人前だと2枚。
たくさん買うから、安くなるというわけでもないようだ。
自分の番がきたとき、凜はドキドキしながら注文してみた。
「お、おじさん、1人前ください……」
「あいよっ」
紙皿を受け取り、間近でクンクンしてみる。
(いい香り! ちょっとキツめの香辛料も入ってて、なんていうか……カレー粉かチリパウダーの入ったスパイシー焼きそばって感じ? 食べるの楽しみ)
しかし箸を貰っていない。
どう食べるのかな? とキョロキョロしていたら、少し離れたところに背の高いテーブルが並んでいた。
みなそこで、屋台で買ったものを食べているっぽい。
(青空フードコートみたい。楽しいっ)
凜も焼きそばを持ったまま、テーブルのほうへと向かう。
空いている場所を見つけ、焼きそばをテーブルの上に置いた。
テーブルの上には、調味料や木製のフォークなども置かれている。
凜はフォークを一本取り、さあ、焼きそばを食べるぞ! となった瞬間――――
周囲のひとたちから、やけにじろじろと見られていることに気がついた。
(ん? 私、この世界のマナーにあっていないことしてる?)
こうなってしまっては、あれほど食べたかった焼きそばを口に運ぶのがはばかられてしまう。
自分のなにがおかしいのか、先に検証するほうが先だ。
(焼きそばを食べる前に、なにかするのかな? 調味料とか?)
(このフォーク、勝手に取っちゃいけないとか? わわっ……どうしよ、わかんなーい)
焦りでオタオタしていると、突然肩がグンと重くなった。
「え?」
見下ろすと、推定10歳くらいの男の子が凜のバッグを引っ張っていた。
「な、なにかな?」
凜の常識では、小学校低学年くらいの男の子はヤンチャなものと決まっていた。
だからバッグを引っ張られても、それが悪意と思わなかった。
たとえ、ここが異世界でも。
「ショルダーが取れちゃうから、あんまりひっぱったらダメだよ。ね? 離して……」
優しくたしなめようとしたら、凜の言葉に被せて、こんなことを言ってきた。
「おい。ババア。金、よこせ」
(ば、ババァ?! 私18歳なんだけど?!)
(それに金って、もしかして恐喝っ!? ま、まさか……?)
「ええと……お、お母さん、どこかな?」
男の子の目線に合わせたほうがいいのかと思い、前かがみになる。
そのさい、するりとバッグのショルダーが肩から滑った。
男の子は、その瞬間を見逃さなかった。
「きゃっ?!」
グンッとショルダーを引っ張られ、凜の腕から抜けていく。
男の子はバッグをしっかりと抱きしめると、背を向けて一目散にどこかへと走っていった。
「どろぼう! 誰か、その子を捕まえて!」
思い切り叫ぶが、誰も動かない。
それどころか、まったくの知らんぷりで、屋台で購入した食べ物や飲み物を楽しんでいる。
(ええ……? なぜ……?)
愕然としていると、近くで焼きそばを食べている男女のカップルが、クスクス笑い始めた。
「なあに? どこの田舎からきたのかしら」
「城下町が一番治安がよくないことを知らないのか?」
城下町が一番、治安がよくない――――?
つまり、王城が歩いてほんの30分くらいの、王国の中心みたいな場所が――――?
(本来なら最も治安のいい場所であるはずよ。邪神族は関係あるの?)
とりあえず、誰も助けてくれないのだ。
バッグは自分で取り返さねばならない。
凜は慌てて駆け出した。
しかし男の子の足は異常なほど早かったようで、もうまったく姿を見つけられない。
「どうしよう……」
ひとが雑多に行きかう、埃っぽい街中。
全財産と、着替えの服を取られてしまった凜は途方に暮れてしまう。
15分ほど、そのあたりを歩いただろうか。
心がどうしようもなくなって、一歩も歩けなくなってしまう。
(こんなことって……)
先が見えない不安と焦燥で、頭がクラクラする。
俯いて立ちすくんでいると、地面に影が映った。
ふと顔を上げると、そこにあからさまに人相の悪い男が3人立っていた。
「これは何と珍しい。黒髪に黒い目だ。あのかたの、おっしゃるとおりだ」
「早速、奴隷仲介業者に売っちまおう。いい金になるぞ」
凜は活気のある市場に、足を踏み入れた。
「うわぁ……すごいっ」
どこまで露店が並び、さまざまなものが売っていた。
野菜、果物といった生鮮食品から、ハムやチーズといった加工食品。
可愛い服や靴、鞄やアクセサリーを売っている店もあるし、食器や家具を売っている店もある。
(楽しそう。ちょっと見たいな)
どこからかよい香りがしたので、鼻をクンと鳴らす。
目線を移すと、大きな鉄板の上で、ジュージューと美味しそうな音を鳴らし、元の世界でいう焼きそば的なものを炒めている。
店主がソースをたっぷり振りかけると、ジュワッといい音がした。
空腹を感じた凛は、ごくりと喉を鳴らす。
(そういや、こっちにきてから、ちゃんとした食事をしてないよ)
着替えるときに、パンとフルーツジュースを出してくれたが、あまり好みの味ではなかった。
パンは唾液を根こそぎ持っていきそうなほどパッサパサで、フルーツは甘みがまったくなく、薄味だった。
こっちの世界の食事はイマイチだなあと思っていたのだが、目の前の焼きそばっぽいものは、香りもビジュアルも好みである。
(ええと……路銀としてお金をもらっていたっけ……)
がさごそとバッグを漁り、革袋を取り出す。
中から硬貨をなん枚か取り出し、ぎゅっと握りしめた。
(無駄使いはしたくないけど、空腹は辛いしね)
列の最後尾に並んで、前方のひとたちが、どう注文するのか探ってみる。
「おじさん。1人前」
「こっちは2人前」
1人前のときは、大き目の銀銅貨を1枚。2人前だと2枚。
たくさん買うから、安くなるというわけでもないようだ。
自分の番がきたとき、凜はドキドキしながら注文してみた。
「お、おじさん、1人前ください……」
「あいよっ」
紙皿を受け取り、間近でクンクンしてみる。
(いい香り! ちょっとキツめの香辛料も入ってて、なんていうか……カレー粉かチリパウダーの入ったスパイシー焼きそばって感じ? 食べるの楽しみ)
しかし箸を貰っていない。
どう食べるのかな? とキョロキョロしていたら、少し離れたところに背の高いテーブルが並んでいた。
みなそこで、屋台で買ったものを食べているっぽい。
(青空フードコートみたい。楽しいっ)
凜も焼きそばを持ったまま、テーブルのほうへと向かう。
空いている場所を見つけ、焼きそばをテーブルの上に置いた。
テーブルの上には、調味料や木製のフォークなども置かれている。
凜はフォークを一本取り、さあ、焼きそばを食べるぞ! となった瞬間――――
周囲のひとたちから、やけにじろじろと見られていることに気がついた。
(ん? 私、この世界のマナーにあっていないことしてる?)
こうなってしまっては、あれほど食べたかった焼きそばを口に運ぶのがはばかられてしまう。
自分のなにがおかしいのか、先に検証するほうが先だ。
(焼きそばを食べる前に、なにかするのかな? 調味料とか?)
(このフォーク、勝手に取っちゃいけないとか? わわっ……どうしよ、わかんなーい)
焦りでオタオタしていると、突然肩がグンと重くなった。
「え?」
見下ろすと、推定10歳くらいの男の子が凜のバッグを引っ張っていた。
「な、なにかな?」
凜の常識では、小学校低学年くらいの男の子はヤンチャなものと決まっていた。
だからバッグを引っ張られても、それが悪意と思わなかった。
たとえ、ここが異世界でも。
「ショルダーが取れちゃうから、あんまりひっぱったらダメだよ。ね? 離して……」
優しくたしなめようとしたら、凜の言葉に被せて、こんなことを言ってきた。
「おい。ババア。金、よこせ」
(ば、ババァ?! 私18歳なんだけど?!)
(それに金って、もしかして恐喝っ!? ま、まさか……?)
「ええと……お、お母さん、どこかな?」
男の子の目線に合わせたほうがいいのかと思い、前かがみになる。
そのさい、するりとバッグのショルダーが肩から滑った。
男の子は、その瞬間を見逃さなかった。
「きゃっ?!」
グンッとショルダーを引っ張られ、凜の腕から抜けていく。
男の子はバッグをしっかりと抱きしめると、背を向けて一目散にどこかへと走っていった。
「どろぼう! 誰か、その子を捕まえて!」
思い切り叫ぶが、誰も動かない。
それどころか、まったくの知らんぷりで、屋台で購入した食べ物や飲み物を楽しんでいる。
(ええ……? なぜ……?)
愕然としていると、近くで焼きそばを食べている男女のカップルが、クスクス笑い始めた。
「なあに? どこの田舎からきたのかしら」
「城下町が一番治安がよくないことを知らないのか?」
城下町が一番、治安がよくない――――?
つまり、王城が歩いてほんの30分くらいの、王国の中心みたいな場所が――――?
(本来なら最も治安のいい場所であるはずよ。邪神族は関係あるの?)
とりあえず、誰も助けてくれないのだ。
バッグは自分で取り返さねばならない。
凜は慌てて駆け出した。
しかし男の子の足は異常なほど早かったようで、もうまったく姿を見つけられない。
「どうしよう……」
ひとが雑多に行きかう、埃っぽい街中。
全財産と、着替えの服を取られてしまった凜は途方に暮れてしまう。
15分ほど、そのあたりを歩いただろうか。
心がどうしようもなくなって、一歩も歩けなくなってしまう。
(こんなことって……)
先が見えない不安と焦燥で、頭がクラクラする。
俯いて立ちすくんでいると、地面に影が映った。
ふと顔を上げると、そこにあからさまに人相の悪い男が3人立っていた。
「これは何と珍しい。黒髪に黒い目だ。あのかたの、おっしゃるとおりだ」
「早速、奴隷仲介業者に売っちまおう。いい金になるぞ」