思い浮かぶのは、君の事。
「…もうすぐ6時になるけど」

「へっ?」

忘れていた記憶がまさかの武からの言葉によって蘇り、思わず変な声を出して振り向いた。

なんで知られているのだろうか。
…しかも、1番知られたくなかった武に。


「な、なんのこと?」

知らないふりをし誤魔化す姿に、武はむくれて言う。

「さっきお前が落とした手紙、見たくもねぇのに目に入ったんだよ」

目も合わせず、武はぶっきらぼうに続けた。

「そいつ待ってんじゃないの。…ま、どうでもいいけどさ」

武はポケットに手を突っ込むと、つんとした背中を向けて晶を抜かして行く。

…ちがう。


「ちがう!」

晶はそう言うと武の手を取り、走り出した。
校内に入り廊下を駆け抜ける。
そして、向かった。

3棟の屋上へ。

「はぁはぁ…なんだよ急に」


武の声を無視し最後の階段を駆け上がると、屋上へと続くドアの前で武の手を離した。

「誰も待ってないし。」

「え?」

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