私の知らない恋の話。
……何だこいつ。
泣いてたら何言っても良いと思ってないか?


「もう、頭冷やしなよ。
私好きとか人生終わりだよ?トチ狂った?」
「ちが、ちがうっ!
俺は、ずっと前から好きで……物心ついた時から、好きで、なぎのこと……好きだった」


……。


……ここまで言われると、本気にしか見えない……し。
あんまり子どもの戯言、みたいな扱いするのも、悪い気がしてきた。


「……もえ、ほんと泣かないで?」
「なぎは……俺のこと、好きじゃない?」


目を腫らして、縋るような目で私を見つめるもえ。
言葉が、詰まる。


「……もえのことは、幼なじみだと思ってる。
私には、好きな人もいないし、他人のことをそういう、恋愛的な感情で見れたこと、ほとんどないから。……期待もしないで欲しい」


もえは、うぅ、と声を漏らして、私に抱きつく。
体温の上がったもえ。
断るための緊張からか、何故か体が冷え切っている私。


……こんな同居、誰に需要があったのだろうか。
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