恋愛偏差値$完
「柚菜が中学生のときに、俺はアメリカへの転勤が決まっていた。そんなとき、母は病気にかかってしまった」
笑い飛ばせる話ではないと、俺は黙ってその話を聞いている。
「アメリカで事業を持つのは、俺の小さいころからの夢で、俺は夢を選んだ。でも、そのことによって、柚菜が苦しんでいたんだな…」
知らなかった。とお兄さんは笑ってみせた。
「柚菜のことだってなにもわかってなかった。今日、初めて知った。……明日アメリカに帰るんだ」
「…そのことを柚菜に言ってみればいかがですか?」
え?とお兄さんは俺を見上げた。
俺がこんなこと言うなんて思ってもなかったんだろうな。
「柚菜の気持ちを聞いたのは、今日が初めてなはずです。お兄さんが今から気持ちを言っても遅くないと思うんですが」
「あんなこと言われちゃったしなぁ…」
お兄さんはだらしなく頭をかいた。
まったく。
「なさけねぇ。お前、シスコンだろパワーをはっきさせろよ。明日帰るんならなおさら」
「なっ…」
いきなり俺がタメグチになったからそれにびっくりしてるんだろう。
「ついでに、お前がストーカーしてたのは、妹を愛しているからと言って来い」
「ムカツク。お前に言われんのムカツク。でも、それよりストーカー?俺してないんだけど」
さっきのはたまたまあの格好だったと付け足した。
「…は?」
てっきりお兄さんが柚菜を心配だからストーカーしてたんだと思ってた。
お兄さんがストーカーじゃないのなら、
「やべーじゃん!」
俺と、少し遅れてお兄さんが柚菜のもとに走った。