恋愛偏差値$完
窓に気づいていないふりをして、あたしたちは手を動かす。
「あいつら、ひく気配ねぇし」
「最後までいると思います」
だよなぁって、ため息ついた。伸先輩、困ってるのよね。
「仕事終わっちゃいました」
最後の仕事を終わして、伸先輩に声をかけた。
「俺も…」
どうしようか。うーん、とあたしたちは悩んでいる。
「柚菜」
「はい?」
顔をあげたら、伸先輩はあたしの手を握っていて。
「走るぞ」
ぐいっとあたしの荷物と、あたしを連れて、伸先輩は部室から出た。
手を引かれながら、後ろを見る。
「追いかけてきてますよっ」
ものすごい形相で。
伸先輩じゃなくてあたしをまっすぐにらみつけている。
伸先輩はファンの子たちをうまくまいた。
あたしと伸先輩はあまり話せないまま、もう家。
「じゃな」
「さよなら…」
明日もこうなのかな…。