恋愛偏差値$完
「家のこと、なんだが…将来の夢ってのは伸にはあるのか?」
家のこと、か。
親父と話さなくなったのは、親父がいつもこの話をするからだよな。
「また、継げと?」
久穏財閥の息子だから、会社を継ぐとか、そーゆーのはごめんだ。
俺の道は俺が自分できめたい。
何度も親父に話して反対されてた夢を今言ったら、親父はどうするんだろうか。
「サッカーをしていきてぇと思ってる。将来、サッカーで食っていけるなんて、そんな保証はどこにもねぇ。けど今は、サッカーが好きなんだ」
今日の親父は違うような気がしたから。
柚菜が切り開いたこの場で言いたいと思った。
「うん。家は継がなくてもいい。伸はサッカーをがんばれ。私が出したこの答えをなん年も伝えられなかった。柚菜さん、ありがとう」
なん年も…?
なん年も俺に言いたくて、でも俺が避けてたたから。
柚菜に協力してもらって…。
「柚菜さんって、伸の彼女なのか?母さんになんだか似てる気がする。私もあと十年若ければなぁ…」
柚菜の手を握りながら、くどいてる。
「だー!そんな触んな!くどこうとすんな」
くどいてると言う言葉に反応した柚菜が、「似たもの家族…」とつぶやいた。
俺には、聞こえなかったけど。