夢と現実
いつか笑える日
僕は高校を卒業し、大学へと進学した。とりあえずやりたい事や学びたい事があったわけではなかったけど、将来的に大学には行っていた方が良いかなといういい加減な理由である。
アイが消えていなくなってから、色々と調べていくうちに、僕は清水のように体と心の性が違う人たちのことを知った。知ったというか、以前から言葉自体は知っていたけど、それは、どこか他人事で僕とは無縁な人たちだと思っていたこともあり、正直なところ興味はなかった。
でも、僕の身近にいた事で、僕の中の意識に少しだけ変化があったのだろう。
清水は周りと違う自分に苦しみ、誰にも打ち明けられず、それをずっと心の奥底に閉じ込めてしまっていた。
そんな時に僕と再開し、仲良くなることで、知らず知らずのうちに閉じ込めていた本当の自分がアイの姿となり僕の前に現れた。
アイは自分を探してと見つけてと言っていた。もう一人の私のことは何も分からないと話していたけど、本当はある程度のことを知っていたのだろうと僕は思っている。
見つけられたらニ度と会えなくなると分かっていても、それでも僕に見つけて欲しかった。
苦しかったんだと思う。
僕を騙すようなことをして。自分がどういう存在なのかを知っていたから。
悲しかったんだと思う。
それを言えずに隠し続けてしまっていることに。
「ねぇ、圭くん」
耳をすませば、アイの声が今でも聞こえるような気がする。
君のいない生活がこんなにも退屈だなんて思ってもみなかった。
寂しくないと言えば嘘になる。今でも、最後に見たあの幸せそうな笑顔を僕は忘れられない。
でも、僕はアイを見つけることができて後悔はしていない。
アイがそれで救われたのなら。
僕は清水と元の仲の良かった友人へ戻れることを願っている。今でも、清水のことを本当に理解できているかは分からない。
でも、清水は清水なんだ。
あいつが転校してきて、榊原と3人で馬鹿話もしたし、プールのボランティアもいった、くだらない遊びもたくさんした。落ち込んでいる時には励ましてくれた。
清水本人はどう思っているかは分からないけど、僕はそうしたいと心から思っている。他人から言わせれば、ただの独りよがりなのかもしれない。
それでも、近づこうとしなければ意味がない。思うだけでは何も進まないから。人の気持ちなんて、心の中なんて、他人には分からないんだ。だから、僕は近づく。
それでも清水が離れても、また近づく。
アイは僕の前から消えてしまったけど、清水は消えていない。ただ、少し離れてしまっただけだ。
僕は携帯を開き、久しぶりに清水へメッセージを送った。
ふと窓の外へ目向けると、街路樹の青々とした葉が初夏の風に吹かれ、ゆらゆらと揺れている。
もうすぐ暑い夏が来るなぁ……
僕はプールのボランティアのことを思い出しふふっと笑うと、窓から顔を出し雲一つない空を眺めた。
一人じゃなく、榊原と清水の三人でこんな風に思い出話しをして笑える日が来ることを願いながら。
アイが消えていなくなってから、色々と調べていくうちに、僕は清水のように体と心の性が違う人たちのことを知った。知ったというか、以前から言葉自体は知っていたけど、それは、どこか他人事で僕とは無縁な人たちだと思っていたこともあり、正直なところ興味はなかった。
でも、僕の身近にいた事で、僕の中の意識に少しだけ変化があったのだろう。
清水は周りと違う自分に苦しみ、誰にも打ち明けられず、それをずっと心の奥底に閉じ込めてしまっていた。
そんな時に僕と再開し、仲良くなることで、知らず知らずのうちに閉じ込めていた本当の自分がアイの姿となり僕の前に現れた。
アイは自分を探してと見つけてと言っていた。もう一人の私のことは何も分からないと話していたけど、本当はある程度のことを知っていたのだろうと僕は思っている。
見つけられたらニ度と会えなくなると分かっていても、それでも僕に見つけて欲しかった。
苦しかったんだと思う。
僕を騙すようなことをして。自分がどういう存在なのかを知っていたから。
悲しかったんだと思う。
それを言えずに隠し続けてしまっていることに。
「ねぇ、圭くん」
耳をすませば、アイの声が今でも聞こえるような気がする。
君のいない生活がこんなにも退屈だなんて思ってもみなかった。
寂しくないと言えば嘘になる。今でも、最後に見たあの幸せそうな笑顔を僕は忘れられない。
でも、僕はアイを見つけることができて後悔はしていない。
アイがそれで救われたのなら。
僕は清水と元の仲の良かった友人へ戻れることを願っている。今でも、清水のことを本当に理解できているかは分からない。
でも、清水は清水なんだ。
あいつが転校してきて、榊原と3人で馬鹿話もしたし、プールのボランティアもいった、くだらない遊びもたくさんした。落ち込んでいる時には励ましてくれた。
清水本人はどう思っているかは分からないけど、僕はそうしたいと心から思っている。他人から言わせれば、ただの独りよがりなのかもしれない。
それでも、近づこうとしなければ意味がない。思うだけでは何も進まないから。人の気持ちなんて、心の中なんて、他人には分からないんだ。だから、僕は近づく。
それでも清水が離れても、また近づく。
アイは僕の前から消えてしまったけど、清水は消えていない。ただ、少し離れてしまっただけだ。
僕は携帯を開き、久しぶりに清水へメッセージを送った。
ふと窓の外へ目向けると、街路樹の青々とした葉が初夏の風に吹かれ、ゆらゆらと揺れている。
もうすぐ暑い夏が来るなぁ……
僕はプールのボランティアのことを思い出しふふっと笑うと、窓から顔を出し雲一つない空を眺めた。
一人じゃなく、榊原と清水の三人でこんな風に思い出話しをして笑える日が来ることを願いながら。