秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。
わかっているのに、段々と呼吸をするのが難しくなっていく。
「飛行機に乗るのはやっぱり怖いですか?」
「・・・・・・っ」
秋世さんに掛けられた声に、驚いて顔を上げる。
(”やっぱり”って、どうして知って・・・?)
「怖いならやめますか?ここまで連れてきておいて何ですが、どうしても無理だと言うなら無理強いはしませんよ」
「えっ・・・」
「一生現実を受け止められないままで良いなら、ですけど」
「・・・・・・」
とどめを刺すようなその言葉に思わず黙り込む。
──二週間前に兄が死にました。
──それを貴方に伝えに来たんです。今から一緒に東京へ来て貰えますか?
そうだ、とても信じられないあの言葉の真偽を私は確かめにいかなければならないのだ。