秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。
「え・・・秋世、まさかとは思うけど、飛翠ちゃんって会社の事も知らない、とか?」
「あぁ」
そんな二人のやりとりを聞いて、胸の奥が少しだけ痛む。
婚約者の勤める会社も仕事も知らない事は、そんなに不自然でおかしな事なのだろうか。高人さんからそれを教えて貰えなかったという事は、私はまだ完全に高人さんから信用されていないという事なのだろうか。
「四宮さんは気にならなかったんですか?」
落ち込んで膝の方向に視線を落とす私に、秋世さんがそう問いかける。その問いかけに、私はコクンと縦に首を振った。
「高人さんが嫌がる質問はしたくなかったし・・・高人さんは高人さんだから、あまり気にしないようにしていました」
「そうですか、変ってますね。兄さんも兄さんですけど、それを許す四宮さんも」
「・・・・・・。」
変っている。
そんな秋世さんの言葉に思わず黙り込んでしまう。──そして。