秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。
秋世さんが重い襖を開いた時に目に飛び込んできた光景が、とても信じられなかった。
「・・・・・・っ」
この光景を覚えている。飛行機事故で両親を亡くした後の後飾り。それを見たのは今ではもう20年以上前の事だが、それでも忘れられずにはっきりと覚えている。
あの時と同じ。同じだ。
白い布に覆われた台。遺骨。側にたつ額縁の中で微笑む人は、私がずっと、ずっと──・・・
「ぁ・・・ぁ・・・ああああああああああああああああああああああ・・・っ」
──何で。どうしてこんな、──・・・なんでっ・・・
「飛翠ちゃん、落ち着いて!」
「嫌ぁあぁあああああああっ」
どうして。どうして。どうしてどうしてどうしてどうして。約束したのに、結婚するって。ずっと一緒にいてくれるって。
それなのに私を置いて、こんな──・・・何故。
「嫌、嫌、なんで、なんで・・・っ」
桐箱にすがりつく私の頬を、まるで壊れた蛇口のようにとまらない涙がいくつも伝う。
嫌だ。どうして。なんで。頭がまるで語彙力を失い、壊れたロボットのように同じ言葉をずっと繰り返して泣きながら、私は気絶するように意識を手放した。