秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。
高人さんが仕事とは何の関係もない居場所を求めていたとして、私がその居場所になれていたのだとしたら。高人さんが羽を休める場所になれていたのなら。
これで、良かったのかもしれない。
三波さんが言ってくれた事はあくまで三波さんの想像に過ぎないけれど、それが真実であって欲しいと思う。
「ありがとうございます。そう言って貰えて、なんだか救われました」
「良かった。だから、あんまり気負い込みすぎないでね。秋世の事も、飛翠ちゃんの目には仕事の鬼にうつってるだろうけど・・・秋世や会社の為じゃなくて、高人の為にって気持ちで頑張ってくれたら嬉しいよ」
(高人さんの為に・・・)
三波さんの言葉が胸に重く響く。
正直、今は高人さんが居なくなってしまった事が悲しくてたまらなくて、高人さんが望んでいた事を実現させようなんて前向きな気持ちにはまだなれない。
けれど、そうやってただ悲しんで何もしないでいるよりは、絵を描いている方がきっと救われるのかもしれない。
高人さんに会えなくなって生きる意味も希望も無くなってしまったと思ったけど、高人さんの為に絵を描く事を当分の生きる理由にするのも良いのかもしれない。