秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。
「貴方が四宮飛翠さんですか?」
そう尋ねられ、その声に思わず心臓がビクッと震えた。
(…声まで、こんなに似ているなんて)
「…はい」
そう返した声は自分でも驚く程に小さい。
「雪谷高人は俺の兄です、俺は高人の弟の雪谷秋世(あきせ)といいます」
そんな言葉に驚く事は無かった。高人さんから3つ歳の離れた弟がいるという話は聞いた事があったし、それを抜きにしてもその容姿で既に察していた。
それにしても、高人さんの弟さんがどうして私に会いに来たんだろう。当の本人には電話もメールも繋がらないというのにどうして。
「…私に何か用事ですか?」
思わず訝しむ声色でそう尋ねる。
すると、高人さんの弟だという彼は、私の目をじっと見据えて。
そして、高人さんと聞き紛うような声で告げた。
「二週間前に兄が死にました」