秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。
そうやって泣きながら時間をかけてやっと書き上げた絵は、自分でも驚く程に酷いものだった。
美味しさなんて微塵もつたわってこない。ただ模写したような、誰の目にもとまらないような陳腐以下の絵だ。もし高人さんにこの絵を見て貰えたとしてもきっと褒めては貰えないだろう。
その後も何度も何度も泣きながら描き直したが、どうしても前のようには描けなかった。
(・・・私、今までどうやって描いていたんだろう)
以前の感覚を取り戻せないまま三日間寝る間を惜しんで絵を描き続けたが、満足のいく絵は一枚も描く事が出来なかった。
そしてとうとう指が痛くてペンを握る事が難しくなった頃、自分の中で何かがプツンと切れた。
「・・・やっぱり、もう無理だ」
そう呟いて洗面台に向かい、洗顔をした後に簡単なメイクをする。
メイクを終えたら部屋着を脱ぎ、クローゼットに掛かっている服の中から一番フォーマルなものを選んで着替えた。