秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。
いきなり目の前に立たれてきょとんとしていると急に右腕を掴まれ、そのまま強く身体ごと押された。
「・・・・わっ!?」
自分の身体を支える事が出来ず、後ろの大きなソファに背中から倒れ込む。
混乱しながらも起き上がろうとするが、秋世さんにそれを制されて動けない。
「そんなに似てますか?」
「・・・・・・っ」
──違う。動けないんじゃない。身体が動かない。
高人さんによく似た瞳、唇の形、声。その全てに一瞬にして毒され、目を奪われ、まるで金縛りにでもあっているかのように身体に力が入らない。
「それなら慰めてあげますよ、四宮さんがもう一度絵を描けるように。
兄と同じ顔で、同じ声で」
そう言って秋世さんが私の顔に手を伸ばす。その手が私の頬に触れた時、身体中の細胞がビリッとするような激しい違和感を覚えたのが分かった。
まるで悪い夢から目覚めたように意識がはっきりとして、気がつけば自分の頬に触れていた秋世さんの手を払いのけていた。
そのまま自分を抑え込んでいた秋世さんの身体を押しのける。そのあっけなさから、最初からさほど力を入れられていなかった事に気がついた。
・・・高人さんによく似た容姿に惑わされ、一瞬でも秋世さんの事を受け入れようとしていた自分自身の愚かさにも。