秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。


『もしもし、秋世です』
「わっ」

驚いて思わず受話器を落としそうになったのをどうにか堪える。よく考えればこの家の固定電話に電話をかけてくる相手なんて秋世さんくらいだ。

「な、何でしょう」

──私はただ、これ以上秋世さんの側に居たくなかっただけです。

あんな口を聞いて会社をでた手前かなり気まずい。   

『今日言い忘れていた事があったんです』
「・・・?」

『四宮さんには、今度の記者発表会に出て貰います』

(記者、発表会?)

あまりにも馴染みのない単語を思わず内心で復唱してしまう。

『兄が亡くなった事と一緒に、四宮さんの事も世間に発表するんです』
「なっ・・・」

───兄さんの死の公表と雪谷食品の商品パッケージイラスト化計画にあたってメディアでの取材に応じて貰いたいんです。全てのイラストを手がけるイラストレーターは今は亡き雪谷食品の次期取締役社長、雪谷高人の婚約者。中々話題を呼ぶと思いませんか?


以前のそんな秋世さんの言葉が蘇る。あの計画が実行されようとしているのだ。
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