秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。





羽田空港へはマンションからタクシーで20分程で到着し、那月とは二階にある時計台の前で落ち合った。

「随分早かったな」
「・・・うん、荷物もそんなになかったから」

そういって少量の荷物を詰めた鞄をみせる。

「それよりごめんね、すごく迷惑かけて。まさかこんな風に飛んできてくれるなんて思ってもみなかった」
「何言ってんだよ。当然だろ、家族なんだから」
「・・・うん」

家族。
実際の姉弟ではないけれど、家族同然のように育ってきた那月にそう言って貰えるのはいつになっても嬉しくて変に慣れない。

そんな那月がこうしてわざわざ東京まで私を迎えにきてくれた。

秋世さんは勿論、雪谷食品には大きな迷惑をかけてまでもこうしたいと私が望んだ事だ。

後は那月に手を引かれて、福岡に帰れば良い。

迷う事なんて無い。自分の為に。

──そう思うのに、まるで大きな石を呑み込んだかのような違和感と恐怖感が拭えないのはどうして。

「飛翠、顔色が良くないけど大丈夫か?」

言われて、血の気が引いているのだと気がつく。

「・・・疲れてるのかも。少し座って休んでも良い?」
「あぁ。飛行機の時間までも余裕あるし、それまでゆっくり休もう」
「うん」
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