秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。
そう答えて近くのベンチソファに腰を降ろす。手が震えているのを那月に見られないように鞄で隠し、青い顔を隠すように俯いた。
「飛翠、やっぱり飛行機に乗るのが怖いか?」
「・・・・違うよ、きっと体調が良くないだけ」
だってついこの間、福岡から東京までの飛行機に乗る事が出来た。
大丈夫、私は飛行機に乗れる。乗れる乗れる乗れる。
そう内心で言い聞かせば言い聞かせる程に鼓動は速さを増していく。
「大丈夫、それに今日は那月が一緒だから」
赤の他人である秋世さんと飛行機に乗る事が出来たのだ。秋世さんと乗る事が出来たのに、家族同然の存在である那月と飛行機に乗れないなんて事、ある筈がない。
「あぁ、俺がついてるから」
「・・・うん」
少し上ずる声で応える私の背中を、那月が一定のリズムでトントンと優しく叩いて安心させてくれる。
年下の那月は私にとっては弟のようなもので、幼い頃の私はよく那月に対してお姉さんぶっていた。それなのに大人になった今はすっかり形勢逆転だ。