秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。
どれくらいそうしていただろう。
搭乗時間の時間が刻々と迫り、私達は搭乗手続きを済ませる為に腰を上げた。保安検査場までの道を、那月の後ろを着いていくようにして歩く。
(手続きを済ませたら、私、また飛行機に乗るんだ・・・)
「飛翠?」
そう那月に名前を呼ばれて振り向かれ、自分の足が止っている事に気がついた。
(あ・・・・)
「どうしたんだよ飛翠、まだ体調が良くないのか?」
「・・・・・。」
大丈夫だと答えて、今すぐこの足を動かさないといけない。わかっているのに、頭の中の自分はそうしろと自分に叫んでいるのに、嘘みたいに身体が動かない。
石のように身体が動かないどころか、心臓は痛いほどに脈打ち喉は焼けたように渇乾する。
気がつけば、自分の身体は座り込むようにその場に崩れ落ちていた。
「・・・・・・ごめんなさい。私やっぱり・・・乗れない」