秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。

そんな私の言葉に、那月が驚いたように、傷ついたようにその両目を大きく見開く。

「何言って・・・だって乗れたんだろ?福岡から東京まで、ついこの間・・・」

「・・・・・・・。」

那月に何も言葉を返す事が出来ない。
驚いているのは那月だけでなく私もだ。自分でも自分の状態に戸惑いを隠せない。

「ごめん、ごめんなさい。・・・どうしても怖くて、」
「俺がついてる。この間とは違うだろ、俺はその日会った初対面の男じゃない」

初めて見るほどに焦燥した顔の那月にそう言って両腕を掴まれる。


───東京での仕事が入ったとして、四宮さん俺がいないと一人で福岡と東京を往復出来ないですよね。

ふと、そんな秋世さんの言葉を思い出してゾッとする。

(まさかそんな・・・こんな事って)

「・・・・何黙ってるんだよ飛翠。高人さんの弟なら、秋世って奴なら良いっていうのか!?」

「・・・・・・。」

首を、横に振らなきゃ。
早く。

違うって否定しなきゃ、那月を傷つける。
今ここで深く傷つける。
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