秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。

「何なんだよ・・・どういう事なんだよ飛翠」

那月の今にも切れてしまいそうな程の細い声にハッとする。

「ち、違う。これは・・・」
「何が違うんだよ、どうかしてるよ本当・・・。そいつは高人さんじゃない、同じ顔した他人だろ・・・っ。俺よりも、そいつの手をとるのか?そいつの言葉で安心するのか?」

怒りよりも悲哀を瞳いっぱいに浮かべた表情でそう問い詰められ、この上なく胸がしめつけられる。

答えなきゃ答えなきゃ答えなきゃ答えなきゃ答えなきゃ答えなきゃ。

そう思うのに、返すべき正しい言葉がわからない。

・・・当然だ、自分でも自分の気持ちがもうわからない。



「貴方は四宮さんを福岡に返して、それからどうするつもりなんですか?」


黙る私より先に、秋世さんがそう口を開いた。

「雪谷高人を失った四宮さんから、兄が残した大きなイラストレーターとしての仕事まで奪ってどうするんですか。本当に四宮さんの事を思うなら、これからの彼女にとっての生きがいを尊重してあげる事が大切なんじゃないですか?」


(これからの、私にとっての生きがい・・・?)
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