秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。

「四宮さんも四宮さんです。兄を亡くした傷が癒えるまで暫く絵は休みたいというのもわかりますが、逆にその傷はいつ癒えるんですか?」

「あ・・・・」

言われて気がつく。

暫くは絵を休みたい。今は辛い。 そう思っていたけれど、じゃあ辛くなくなるのはいつ。高人さんをなくした傷が癒えるのはいつ。

「四宮さんがご両親を亡くされたのはいくつの頃の事ですか?」
「6歳の、時です・・・」
「その時から20年たった今でも、四宮さんはご両親の死に傷ついたまま飛行機に乗る事が出来ないですよね。空港で気分も悪くなってしまうくらいに」
「・・・・・・っ」

冷たい冷水を浴びせられた心地がした。


──お母さん、お父さん・・・っ

──嫌、嫌っ、いやぁああああああああああああぁ!!


私は、あの時からずっと、何も・・・。
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