秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。
「亡くなった兄を通して四宮さんと接点を持たなければ私が四宮さんの絵を知る事はありませんでしたので、兄の力が無かったと言えば嘘になります。
ですが、私が四宮さんを選んだ何よりの理由は、その実力です」
そう言って秋世さんは私に歩み寄ると、私の左肩を軽く持ち、言い放った。
「亡き副社長の婚約者である彼女を起用した理由は、話題性の為か。ただの情か。それはこれから店頭に並べられる彼女の絵を見て頂ければ答えはわかる筈です。
記者の皆様、消費者の皆様には是非ご自分の目で確かめて頂きたい。」
「・・・・・・っ」
一瞬見せた秋世さんの不敵な笑みに背中が凍り付く。
(秋世さん・・・今、一体何を)
秋世さんのとんでも発言に焦りと戸惑いを隠せない私に、秋世さんが怖いくらいに綺麗な微笑みを返した。
「でも私は四宮さんならやってくれると信じていますよ。何せ彼女は、私と兄の選んだイラストレーターですから」
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