秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。


「飛翠ちゃんお疲れ・・・って、わぁ、すごい顔してるよ」

会見を終えて袖に捌けると、私の顔を見た三波さんがそう言って遠慮がちに笑った。

(・・・そうか、私今、すごい顔してるのか)

今の私には指摘された表情を作り直す気力もなく、ぎこちない作り笑いをするので精一杯だ。そんな私を見て、三波さんがはぁっと小さくため息をつく。

「まぁ仕方ないよね。あんな大々的にプレッシャーかけられたんだから・・・・ねぇ秋世?」

三波さんが苦笑して視線を流した先は、私の隣で涼しい顔をして立っている秋世さんだ。

私も思わず睨みつけるような表情で秋世さんに向き直ると、あっさりとした表情で一蹴された。

「記者からの想定外の質問に固まってしまった四宮さんに、俺は助け船を出しただけですよ」
「そ、それは・・・っ」

──雪谷食品のイラストレーターとして抜擢された理由は、やはり亡き雪谷副社長の力だとお考えですか?もしくはその話題性を買われたとも?

秋世さんの言うことは最もだ。

あの記者の質問に私は真っ白になって、何も答える事が出来なかった。あそこで秋世さんが代わりに答えてくれなかったら大変な事になっていただろう。

・・・だって図星だった。機転を利かせて上手い回答が出来る余裕がでないくらいに、痛い図星だった。

「でも、だからってあそこまで大げさな嘘言わなくたって・・・あの記者の人が言った事も、何も間違っていませんし・・・。私の事、どこまでも追い詰めるつもりなんでしょう」

「俺は嘘を言ったつもりはありませんよ。会見で言った事は俺の本心です」
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