秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。
そう言って秋世さんが意地悪な笑みを浮かべる。
その笑みはもう、あんなに瓜二つの筈の高人さんとは重ならない。
秋世さんの言う通りもう私には逃げ道は無いし、この上ないプレッシャーもかけられた。
私は高人さんを失ってからずっと、この雪谷秋世という男の手の平の中で転がされている。
・・・会見での言葉は本心だったと聞いて驚きながらも喜んでしまっている事も、もしかしたら全て彼の計算上の事なのかもしれない。
ほんの数日前まではそれが嫌で怖くてたまらなかったのに、今ではそれが吹っ切れたように全てを受け入れている自分がいる。
だって何かしていないと、何かに動かされていないと、ずっと高人さんの事ばかり考えてきっと私はもう生きていられなくなる。
そんな事を高人さんは望まない。それならせめて、高人さんが望んだ事にこれからの私の時間をかけよう。
私にはもうこの道しかない。高人さんを失って、那月を傷つけて、そして自分の力ではこの東京から出る事すらかなわないのだから。
──そう思っていた矢先の事だった。