秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。

「本当に、何でもないです。ちょっと疲れただけです」

突然の右手への痺れと痛み。

場所が場所なだけに、それを正直に言うのは憚られた。

(痛みも痺れも数秒で引いたし、本当になんともない。・・・大丈夫)

そう自分に言い聞かせ、もうすっかり元の感覚に戻った右手を左手でそっと握った。









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